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【06.07.23】豊田PCB処理施設の問題点

漏洩事故後、操業を再開

 十八日付で、豊田市環境部から市議会に対して「豊田PCB廃棄物処理施設の運転再開の承認について」という連絡が入りました。
 豊田市細谷町のトヨタ元町工場に隣接設置している同施設は、PCB廃棄物の処理施設として、昨年9月より操業していました。
●PCBって何  
 PCBは、カネミ醤油事件で問題になったように毒性が極めて強いのですが、一方、熱で分解しにくく、不燃性、電気絶縁性が高いなどから、電気機器の絶縁油、熱交換器の熱媒体、ノンカーボン紙など様々な用途で利用されました。
●施設設置の経緯
 そもそも、PCBは企業の利益のために使われてきたもので、処理は企業の責任で行うべきものです。
 ところが、政府は、国民の税金を使って、全国に5カ所の施設をつくって処理をすすめようというのです。理由は、民間がなかなかやらないから処理できない、高度な技術だから国の責任でやるというものでした。日本共産党は国会で反対しました。
 全国5カ所の一つとして、トヨタ元町工場に隣接して処理施設が建設されました。もとも、処理しなければいけないPCBを一番多く保管していたのがトヨタだから豊田に立地されたというのが経緯といっても過言でもありません。
●PCBが漏れる事故
 操業間もない昨年11月21日深夜、漏洩事故が起きました。
 蒸留塔塔底ポンプの圧力計が脱落して、そこからPCBが漏れ出たものでした。しかも、「施設は密閉されていて、万一、事故があっても、外には漏れ出ない」と説明されていましたが、天井裏へPCBが流れて、密閉していたはずの部屋から外部へ漏れてしまったのです。漏洩した量は少なくても、ことは重大です。
●問題点はどこに
 一つには、建設を急ぎすぎたのではないかという点が指摘されます。建物は密閉されていると言っていたのに、簡単に外に漏れてしまった事を考えれば、工事の完成の検査が不十分であったと言わざるを得ません。
 二つには、もともとは、国(環境省)が責任をもってすすめる事業なのに、民営化で民間のJESCO(政府全額出資の特殊会社)が運営していて、国の責任があいまいになっている事です。事故後、現場からJESCOの責任者に電話したが深夜のため連絡がとれず、職員の対応が不適切だった事が明らかとなっています。連絡体制、マニュアル、運転会社社員の教育不足が指摘されます。
 三つに、情報公開が最も求められる施設なのに、地域住民は新聞報道で事故後の22日に知ったという点です。
 積極的に情報開示をするのではなく、「秘密主義」の対応が続くようでは、地域住民は、施設の存続そのものを問題にする必要が出てきます。
●市の対応はどうか
 豊田市は、国の要請をうけて、この施設の設置を受け入れました。また、産業廃棄物を監督する権限と責任を負っています。
本来、その権限を発揮して、市民が安心できるまで操業再開は認めないとする毅然とした態度が求められました。
 事故後、豊田市PCB処理安全監視委員会(1月31日)が開催されました。環境部長は、同安全監視委員会で「再開ありきでなく」原因究明と対策の実施で、「監視委員会のゴーサインがなければ再開しない」と述べていました。
 ところが、原因や責任の所在など最終報告のないまま、5月7日から17日間試運転がおこなわれました。試運転を行うにあたって、安全監視委員会は開催されませんでした。
いくら、試運転といえども、PCB処理の工程を稼働させるわけです。その段階で、監視委員会が開かれないのは大変問題です。また、地元に事故の説明会が十分に開かれていませんでした。
「監視委員会のゴーサインがなければ再開しない」と言っていた決意はどうしたのでしょうか。
 この市の対応を見ると、JESCOがつくった「再開ありきから逆算したスケジュール」に沿った対応になってしまっていると言われてもしかたがありません。
 このような経過の中で、市は、JESCOに対して7月18日(火)に本格運転の再開を承認する旨を通知したのです。
 市が、本来はたすべき監督権限をしっかりとはたして、二度と事故を起こさせない事や、情報開示をしっかりやらせる事が求められます。

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